本「戦慄 上下」凄惨な過去を持つFBI特別捜査官が遭遇した殺人事件は… [本]
「戦慄 上・下」 著者 コーディ・マクファディン
★★★★☆ (個人評価 ★多めならおすすめ)
FBI特別捜査官スモーキーは凶悪犯に家族を惨殺され自らも傷を負わされた過去を持つ。その家族の思い出を処分しようと休暇をとるがその最中に呼び出されてしまう。
一家が惨殺されただ一人生残った16歳の少女がスモーキーと話がしたいと言うのだ。
駆けつけたスモーキーに少女は告げる。6歳のときからストレンジャーという男につきまとわれ、以前両親を殺され今また養父母を殺されたのだと。
そしてその少女の日記には凄惨な過去がつづられていた。
このシリーズ、二作目でもやっぱりもうものすんごい嫌な凄惨な最悪な事件を扱う。
何の罪もない子どもを虐待し、小児性愛者、幼児の人身売買等々悪魔とかいいようのない悪行を続ける犯罪者が出てくる。
読んでて胸が痛く人間の汚さに吐き気を覚える。
しかし…。読後感が悪くない。
なぜか。
きっと出てくる人々がそれぞれ苦しみを乗り越え傷を持ったまま生き続けようと必死に頑張るからだろう。
特に母親を眼の前で殺され心に傷を負い言葉を失ってしまったボニーには涙を誘われる。それほどまでに深い傷を持っていながら明るく素直で人の心を癒す存在になっている。
この巻の主人公ともいえる16歳の少女の悪夢のような人生にも胸を痛めるが、彼女も立ち直るのだろうと思わせる温かさに溢れたラストにほっとする。
決して絵空事とは思えない文字通り戦慄を覚える内容だけれどそれだけではなく深い感動を与えてくれるのは、登場人物たちの深みあるキャラクターのおかげだと思う。
三作目が楽しみ。
しかし、ほんと陰惨な事件なのでそういうのがだめな人は読みすすむことができないかも。
なかなかにグロくて目を背けたくなるほどの内容です。
ただキャラクターたちがそれらを乗り越えて強くなっていく様子はほっとすると同時に人間って悪に染まる人もいるけど、大部分の人は善なんだよな、と信じさせてくれる。
とにかく、衝撃サスペンスの名に恥じない小説だと思う。
映画「ヘイトフルエイト」雪に閉ざされた小屋で一体何が起こったのか… [映画]
本「ライディング・ザ・ブレット」ヒッチハイクしたその車に乗っていたのは… [本]
「ライディング・ザ・ブレット」 著者 スティーブン・キング
★★★☆☆ (個人評価 ★多めならおすすめ)
大学生のアランにかかってきた一本の電話。
それはたった一人の家族である母が倒れたという知らせだった。
女手ひとつで育ててくれた母、その母が脳溢血で入院した病院へ急ぐアラン。
車が壊れているためヒッチハイクで遠く離れた母の住む町へと向かう。
しかし彼を乗せてくれた男は…。
久しぶりのキング。
てかこれ昔読んだな(笑)。
最近同じ本を買ってしまったりそういうの多くなってきた。
全然読まずに積読だからってのもあるけども。
読める本がたくさんあるのってほんっとに幸せで、読んでない本が積みあがってるだけでうれしい。
あ、この小説は短編です。すぐ読めます。
けどさすがキングだわ。実際に自分がこんな目に遭ったら…という気持ちで読める。
恐怖とか不安とか焦燥感とか予感とかそういう言葉にしずらい感情を見事に描く。
アランは子供のころから母と二人暮らし。父は幼いころに亡くなっている。
とても貧乏だったが、母が必死に働いて育ててくれた。
奨学金と学費ローンでメイン州立大学に入学したアランは母と離れて暮らすことになる。
そんな時に母が脳溢血で倒れたと知らせがはいる。
車が故障しているためにヒッチハイクで向かうアラン。
いやヒッチハイクって怖いやろ。日本ではあまりポピュラーではない。
知らない人を車に乗せることに抵抗あるし。
アランがヒッチハイクした車、運転していたのは…というお話。
車の中でのソレとの会話はなかなかスリリング。
そしてソレから持ち掛けられた選択とは。アランが選んだのは。。。
ラストまで読んでしまえば、このヒッチハイクの意味がよくわからなくなるなぁ。
アランにとってこの経験は悪夢だったけれど、そこまで悪いことでもなかったんじゃないかと。
この経験のおかげで母への愛情を再認識したわけだし。
何が言いたかったのかなぁ。恐怖体験ではあるけれどその結果は…。
まぁでもヒッチハイクは怖いな。車という密室の中でよく知らない他人と一緒。
しかも決定権は運転している人物にあるからね。
身をゆだねるしかない。こわっつ。
キングはこういう超常現象を生活に持ち込むのがうまいと思う。
日常に潜む狂気とか、何かわからない怖いものとか、そういうものはしれ~とそばによってくる。
それに気が付いた人の心理を子細に描くのがもうすごいわ。
人の感情ってさ、文字にしようとすると陳腐な表現でしか表せない、私は。
それを少しの動きだったり、口にする言葉だったり、細かく手に取るように読ませてくれる。
そこがまどろっこしくてキングを嫌いな人もいるんだろうな。
長編だと延々何も起こらず、ただただ主人公たちの心情をことこまかに読まされるだけ。
はよ、何か起これよ!といらっとなることもなくはないw
けれどそんな中にも不穏な空気は確かに流れていて、徐々に徐々にじわじわじわじわ何かが起こる不安感が終始つきまとう。
そして後半、怒涛のように悪との戦いが息もつかせぬ勢いでやってくる。
これがキングの小説の醍醐味なんだよなぁ。
ジェットコースターを思い起こさせるんよ、キングは。
がたんがたんとコースターが上がっていく。
そのうち絶対に落ちるとわかっているから期待と不安と恐怖でボルテージが上がっていく。
そして急降下!!
終わると二度と乗りたくないわという思いと、もう一度あの恐怖感を味わいたいという相反する思いに捕らわれる。
そしてまた性懲りもなく乗るんだよなぁ。
今回の小説は短編だから、そこまでまどろっこしくない。
物語はすぐ佳境に入る。
そして主人公アランの選択の結果を読者はどきどきと待つ。
選択の結果を想像したとおりにはしないとこもキングだな。
そのまんま終わらせないとこがいいわ。
ちなみにタイトルのブレット(Bullet)は遊園地にある昔ながらのジェットコースターのことらしい。
人生なんてジェットコースターに乗っているようなものということか。
落ちたり上がったり、ゆっくり過ぎるかと思えば急展開したり。
私は自分の人生をジェットコースターみたいにはしたくないわ~。
それは小説の中だけで充分です!!!
本「感染列島パンデミックデイズ」人気作家が急逝。未知のウイルスが?!?! [本]
「感染列島パンデミックデイズ」 著者 吉村達也
★★☆☆☆ (個人評価 ★多めならおすすめ)
弱毒性豚インフルエンザが猛威を振るったあと、世界はいずれやってくる鳥インフルエンザの脅威を恐れていた…。
おりしも沖縄で鳥インフルによる感染が確認されたが数人の被害で抑えられた。
ほっとしたのもつかの間、海外帰りの人気作家、神崎慧一が猛スピードで死に至る感染症状で死亡。
まったく未知のウイルスが日本を襲う?!
パンデミック小説好きなんだよなぁ。。
なんでだろ。今がコロナ禍っていうだけじゃなくて昔から。
きっと怖いから。恐れてるからかも。
そうなったときのために心の準備をするためかも。
まぁコロナが蔓延してる現在、今まで読んだ小説は何の役にも立ってないけどな!
タイトルに惹かれて購入して読んだけど…。
【少しネタばれあり注意】
はっきり言ったら肩透かし。
私が期待したパニック小説ではなかった。
まずは導入で焼死体が見つかる。
ぐっと気持ちをつかまれる導入。一体なぜ?誰が?という疑問を投げかけ、そして場面は少し前の日時へとさかのぼる。
ここでもう期待値上がりまくり。
なんだろなんだろ、って。
そして最初に沖縄で鳥インフルエンザが発生するんだけど、離島での発生だったこと、そして感染者が米国人だったことから米軍が介入しことを収めてしまった。
これがパンデミックの始まり…ってわけではなかった。
それでも最初の焼死体といい、鳥インフルの人への感染といい、これは強毒性の鳥インフルが猛威をふるうんだろうなぁという想像を膨らませていったわ。
ところが鳥インフルは意外とあっさり収束。
まだ人から人へと感染するほどの変異は遂げてなかった。
おそらく飼っていた鶏に接触した米国人たち(こちらは死亡)と、その飼い主(こちらは助かる)だけが直接鳥からウイルスに感染したらしかった。
興味深かったのは、強毒性のインフルに感染したとして若い人ほど、多臓器不全をおこし死亡する確率が高くなること。
活発な免疫のせいでウイルスをやっつけようとして正常な臓器までやっつけてしまうから。
鳥インフルエンザの怖さってこれだよな。
で、そろそろ国内でパンデミックが起こるのかと思いきや、人気作家である神崎慧一の話やその生い立ちに関する話が続く。
不穏な空気になるのは神崎が小説のために海外に行くくらいか。
まぁそれも帰国後に体調を崩し…というところまではそこまで病気の話にはならない。
ムンクの絵がキーになるんだけど、どう繋がるのかこの時点ではまったくわからない。
そして神崎が帰国、体調が悪くなり叔父の病院に駆け込む。
病状はすぐに悪化、体中から血を流し死亡。
新しい感染症と判断した医師(神崎の叔父)はWHOや厚生労働省に報告。
ここでようやく新型インフルエンザの脅威が襲う。
しかし!ここでもパンデミックは起こらない。
神崎が乗ってきた飛行機、電車、タクシーそれぞれで接触した人々の中から感染者は一人として出ない。
安心し始めたときに、神崎を診た叔父である医師の感染が発覚。
ここらですでに小説は終盤なのよ。
もうパンデミック起こっても遅いやろ!
このウイルスの正体というのが肝になってるんだけど、パンデミックの話ではなくてですね。
こういう感染の仕方もある、こういう脅威もあるという斬新なウイルスの感染話だった。
いつパンデミックになるかわからない、ということでこのタイトルになったんだろう。
この小説のウイルスはとりあえずは抑え込めた。
でも、こういった脅威はいつ襲ってきてもおかしくない、常に警戒しなければならないというお話だった。
コロナ禍の今、確かに何が起こるかわからないと思う。
致死率の高くないウイルスだったにもかかわらず、世界中でたくさんの人が亡くなり、今でもまだ感染者は増え続けている。
ようやくワクチンが打てるようにはなったけど、それで感染が防げるわけではない。
治療薬はまだまだできそうもない(2021年8月現在)。
コロナの場合、致死率が高くないことが蔓延の理由でもあるけど後遺症が残ったり、基礎疾患のある方にとっては恐ろしいウイルスであることには間違いない。
健康な人だって死亡するんだから、コロナのすべてがわかっているわけでもない。
リアルで経験しているパンデミック。
小説の中ではどう解決していくのか…が気になって読み漁ってるけど、今回のこの小説に関してはウイルスの出どころ、感染の方法、そういったものが斬新だった。
あと、どんでん返しというものでもないかもだけど、感染してない?ほっ。。いややっぱ感染してた!
とか、感染方法とかいろいろ考えても見なかった内容でそこも面白かった。
面白かったけどパニック小説を期待して読むとちょっと違う…となると思う。
★は二つにしたけど、このタイトルの意味のとらえ方次第でとても面白い小説だと思いますわ。
本「ゾンビサバイバルガイド」ゾンビから生き残るために必要なガイド本です! [本]
「ゾンビサバイバルガイド」著者 マックス・ブルックス
★★★★☆ (個人評価 ★多めならおすすめ)
ゾンビが大発生したら…。
どこに逃げてどうやって生き延びるのか。
逃走方法、籠城のための必須事項、対ゾンビ戦闘方法、武器、等々来るべくゾンビ大発生に向けてのサバイバルガイド。
著者のマックス・ブルックスは映画にもなった「WORLD WAR Z」ブラッドピット主演作の原作者。
原作小説も読んだし、映画も観たけどめちゃくちゃ面白かったなぁ。。
で、この本はゾンビからいかにして生き残るかのサバイバルガイド。
大真面目です。
なんか何がほんとなのかウソなのかわからなくなってくる内容。
実際にゾンビが発生したと思われる事件も載ってるんだけど、ほんとなのかウソなのか判別できないほどリアル。
まぁアメリカの著者さんなので、対ゾンビの武器が銃であることが日本向けではないかな。日本では一般人が銃を手に入れるのは不可能だからね。
でも銃がなかったらゾンビと戦えないかというとそうでもない。
実際銃があったところで、動くゾンビの頭を狙って的中させられる確率なんて低いから。現役警察官だったとしても無理だろうしね。
ほかにも武器になるものをいろいろ紹介している。
釘抜きなんかは強力な武器になるんだって。買わなきゃ…。
ウォーキングデッドというドラマにハマってからはゾンビ対策になるかどうかで家や建物を見るようになってしまった。。。弊害がすごい。
ここならしばらく籠城できるな、でもあっちの塀はもろいからダメ、とか。
もし今家を新築することになったら、コンクリートの壁6Mくらいので家を囲んでしまいそう。。。
で、この本なんだけど真面目にゾンビ対策について書いてます。
・ゾンビはウイルス感染によって引き起こされる(まだわかっていないことが多い)
・車で逃走するのはダメ、自転車か徒歩がいい(音がするのと道がふさがっているから)
・ショッピングモールに立てこもるのはおすすめしない(ガラス張りはすぐ破られるし、大量の人間が同じことを考え殺到する)
・信頼できる仲間たちとあまり人がいない荒野で防壁を作り自給自足の生活を送るのが良い。
・ゾンビ対策と同じかそれ以上に山賊となった人間を恐れよ。
てな感じかな。
読んでるとまるで本当にゾンビが存在しているように思えてきます。
たぶん私が死ぬまでゾンビが大発生することはないと思うけど、万が一そんなことになったらこの本はバイブルとなるでしょう。
でも読み終わってわかったことは、私は生き残れないな…ということ。
おそらくゾンビを殺せるだけの根性も勇気も体力も知力もない。
とっととゾンビの仲間になってうろうろするのが一番苦しまない方法かもな。
このことからも私って長いものにまかれろ系の人間だとわかるな。
大人数のほうに従ってれば楽、みんなと一緒が楽、という典型的な日本人タイプ。
…そうなのかな。ゾンビなりたくないな。
いやいやいやいや、やっぱり徹底的に戦うぞ!!
と決意を表明したとこで終わります。
ゾンビ対策をしたい方にはこの本は超おすすめです!
←私のゾンビ原点は「ゾンビ」だな。ほんっとにほんっとに怖かった。トラウマ級に。