本「地下室の箱」不倫の末妊娠した女性が攫われた。地下室に閉じ込められた彼女の運命は [本]
「地下室の箱」 著者 ジャック・ケッチャム
★★☆☆☆ (個人評価 ★多めならおすすめ)
サラは既婚者であるグレッグの子供を妊娠した。
中絶するためにクリニックに向かったサラ。
ところが彼女は誰かに拉致されてしまう。
目隠しをされ地下室に監禁されるサラ。
そしてサラは際限のない壮絶な暴行を受けることになる…。
犯人の目的は?
この作者さんは実際に起こった事件をもとに小説を書いている。
しかしその実際に起こった事件がまたすさまじいのだ。
例えば「オフシーズン」これは実際に起こった人喰い一族のお話。
洞窟に住み、通りかかった旅人を捉えては食べる。
家族の中で近親相姦を繰り返し一族の女は次々と妊娠出産。
当然子供たちは読み書きもできず野生児のまま育つ。
そしてもうこれでもかっていうくらいのグロ描写。
でもこれが事実なんだっていうからもう恐ろしい。。。
ちょっと読み進めることができないくらいのエログログロ小説だった。
それに比べたら今回のはまだマシ…か。
マシというだけで、妊婦さんを痛めつけ傷つけ監禁するのだからこういうのに耐性のない人はメンタルやられるかも。
私も耐性があるわけではないけど、小説として読むならグロ可能なので。
…ひかないで…。
たぶん、想像力が貧困すぎてグロ描写平気なんだと思う。
だって映画のグロは観れないもん。
いや観るけど(どっちやねん)。
でもあんまり観たくない。
最初からなんか登場人物に感情移入できない状況。
サラはバツイチ。以前子供を事故で亡くしている。
グレッグは妻帯者。子供もいる。
その状況で、二人は愛し合ってるというサラ。
そしてサラは妊娠。
しかしグレッグは家族を捨てられない。
中絶を決意した二人はクリニックへ向かう。
グレッグが車を止めに行ってる間にサラは拉致されてしまう。
必死で行方を捜すグレッグ。
サラは、ある夫婦に拉致されていた。
家の地下室で棺のような箱に閉じ込められる。
箱からは解放されても、地下室の中で拷問を受けるサラ。
夫婦はある組織の一員だという。
もしサラが従順でなければ、サラの両親が組織に殺されるという。
徐々に洗脳されていくサラ。
よく拉致監禁の被害者は洗脳されるっていう。
なんかわかる。
拉致監禁されたら生殺与奪はすべて監禁者にゆだねるしかなくなる。
そんな中、少しでも楽になるためには従順になるしかない。
少しでも優しくされると感謝さえするように。。。
怖い!!!!
恐ろしすぎる!!
ただね、以前読んだ「隣の家の少女」これもケッチャム作なんだけど、こっちのほうが悲惨だった。
救いのない虐待。
周囲の人に助けを求めるも助けてもらえない。
絶望につぐ絶望。
これに比べたらなんか今回のはあっさり終わった気がした。
今回も悲惨なんよ?悲惨ではあるんだけど。
今までのケッチャムがひどすぎたのもあるかもな。
結末がどうなるかは書かないでおくけど、まぁこうなるだろうな、という結末。
これも実際に起きた事件を元に書いてるらしい。
結末も同じかどうかはわからないけど。
「隣の家の少女」は何も悪くないいたいけな少女が暴行されるから、胸が痛いし助けてあげたいし、周囲の人間にも腹がたつ。
けど、今回の主人公は、不倫してるは、その子供を中絶しようとしてるはで、共感ができなかった。
だから拷問されてもいいわけじゃないし、同情もするし可哀そうにも思うんだけど感情移入ができなかった、最後まで。
助かってほしい!という思いでは読んでたんだけどね。
もし自分がこんな目に遭ったら。。
もう死にたいだろうな。
いっそ殺してくれ!って思うわ。
絶対反抗する気にはならないと思う。
なるべく媚びを売って好かれるようにするだろうなぁ。。。。
人間の生きたいという感情を赤裸々に描く作家さんだと思うのだけど、はっきり好き嫌いが分かれると思う。
同じ恐怖を描くにしても、ケッチャムは他のホラー作家さんと違って容赦ない気がする。
細かい所まで徹底的に被害者を痛めつける。
どうすれば一番嫌か、痛いか、どんな目に一番遭いたくないか、をよく知ってる作家さん。
とにかく残酷描写は随一じゃないかな。
徹底的に人体を痛めつける…。血みどろに。
グロ描写が平気な人以外は読まないでほしい。
で、少しでも人間の強さ、弱さ、生への執着、人の不幸と引き換えに得る満足感、どうしようもない悲惨な運命、閉塞感、等々を知ってみたい方は、まず本書から読んでみてほしい。
この残酷描写に耐えられるなら、次に「隣の家の少女」を読んでみて。
「隣の家の少女」になんとか耐えられたら「オフシーズン」へどうぞ。
人間の本質ってこれなのかもしれない、と思わせられる一族に出会えます。
しばらくお肉が食べられなくなるかも…だけど。
まぁおおっぴらにおすすめできる作家さんではないことは確か。
かの有名なスティーブン・キングが「ディズニーがケッチャムを映画化することは決してない」と言ったらしい。
そりゃそうだろ!!
こんな悲惨な血みどろ小説をディズニーが買うわけがないわ!
ただね、ケッチャムに出てくる登場人物のほとんどがどうしようもない人間だけど、その中にも勇気がある人、生きようと必死になる人、等々は出てきます。
サラもそう。強い。
人間の汚さや野蛮さ、本能の恐ろしさ、隠している闇を赤裸々に暴いていくケッチャム。
人ってこんな目に遭っても生きようとするんだな、とその強さにも驚くことでしょう。
オフシーズンの人喰い一家ですら、本能のまま人間が暮らしたらこうなる…の見本だからね。
14世紀のスコットランドで実際に起こった事件らしいから興味あれば調べてみて。
それを小説化したのが「オフシーズン」
今回の小説もヒッチハイクしていた20歳の女性を七年間にわたって監禁していた夫婦の事件を元に書いているらしい。
ただ実際の事件を元にしてはいるけど、理由だったり、当事者だったり、結末だったりそういうのは実際の事件とは変更を加えていたりする。
さて、どなたか読む勇気のある方はいますかね?
勇気っていうか、ちょっと変態じゃなきゃ読めないかも。
私は吐き気を覚えながらもなんでこういう小説読むのかな。
人間がどこまで残虐になれるのか、そしてそれを受ける側の人間の心理の変化、そういうのに興味があるからかな。
あと、どうしたらこういう状況から抜け出せるのか、どうするのが最善なのか、を知りたいのもある。
と、言い訳してても私の中にある残虐性がこういう小説を好むのかも。
私は虫すら殺せない心優しい女性なんだけどなぁ。。
いや、マジで。ほんとだから!
あんまりケッチャム読んでます!とは公言しない方がよいと思います。。。
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