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本「死刑にいたる病」連続殺人鬼からの依頼は… [本]

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「死刑にいたる病」
 著者 櫛木 理宇

★★★☆☆ (個人評価 ★多めならおすすめ)

望まないFラン大学でやる気のない生活を送る雅也。
ある日何人もの少年少女を殺したシリアルキラーである榛村大和から手紙が届く。
彼は連続殺人鬼として収監されていた。
面会に行くと彼から冤罪を晴らしてくれと依頼をされる。
求刑されたうち一件は自分の犯罪ではないというのだ。

死刑にいたる病 (ハヤカワ文庫JA)

死刑にいたる病 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 櫛木 理宇
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/10/31
  • メディア: Kindle版

阿部サダヲさん主演で映画化されてます。
これ、映像化したら相当グロイのでは…。

小説はそこまでグロくはない。
拷問シーンは省かれているし、殺す瞬間や監禁されている間の事は少し語られる程度なので。
この小説のえぐいところは殺人鬼の行為ではない。
虐待をする親、虐待される子供…がえぐい。
人間の裏の真っ黒い部分をこれでもかと突き付けてくる。

死刑にいたる病3.png

 

まず主人公の雅也。
彼は幼い頃は成績優秀、運動神経も良く自分は優秀なのだと自覚し、父親からも自慢される息子だった。
しかし進学校である全寮制高校に入学し落ちこぼれてからは、自宅には寄り付かず意に染まない偏差値の低い大学でくすぶる毎日。
自分に自信を持てず誰とも交流せず心の中に鬱屈が溜まっていくような日々を送っていた。

そんな時におそらく死刑判決が出るであろう大和から手紙が届く。
大和は24件の殺人容疑により五年前に逮捕されている。
しかしそのうち警察が立件できたのはたったの9件。
そして大和はその9件のうち1件の殺人事件は自分が殺したのではないと雅也に伝える。
その冤罪を晴らしてほしいと依頼してきたのだ。

 

死刑にいたる病2.jpg

実は大和は殺人を犯している間パン屋を営んでいて、子供だった雅也はその常連だった。
大和は人あたりが良く、客の評判も高い。
そして近所からも良い青年だと好かれていた。
殺人が発覚すると周囲の人間は彼がそんなことをするなんて…と驚愕するほどみんなに好意を持たれていた。

雅也はなぜ自分に依頼してくるのか不思議ではあったが、大和の頼みを受けることにする。
そして調査を進めるうちに驚愕の事実が…というお話。

まず、大和のキャラクター。
つかみどころのない感じ。本音を言わない人。感情を表に出さない。
でも穏やかで人あたりが良く、親身に相談に乗るという印象を持つ人もいる。
これがすごい。
よくこんな人物を生み出したなぁと。
大和はとても複雑な家庭で育っている。
実母は知的障碍者のボーダーであり、男を連れ込んでは同棲する。
そしてその男たちに大和は虐待を受け続けていた。
大和自身は知能が高く容姿も端麗であるが、育った環境ゆえに周囲からいじめられたりもする。

また雅也も、父親や祖母から過大な期待を寄せられ育ってきた。
その期待に応えようと努力していたが、高校で挫折し自己嫌悪と罪悪感にまみれ、自己肯定感を失ってしまっていた。
肉体的な虐待ではないけど、親の理想の子供でいないと愛されない…という思いを抱かせてしまったらこれは精神的虐待になる。
あなたはあなたでいればいい、生きていてくれるだけでいい、存在そのものを愛している…と伝える重要性を改めて考えたわ。

実の親から愛情を受けずに育つ…。
そういう人物が描かれるこのお話。
確かに実際にそういうことは多いのだろう。
けれど、そうやって育った子たちが全員犯罪者になるわけではない。
まぁ大和の境遇は悲惨で同情すべきものではあるけど。
この小説の中でも殺人鬼の資質について語られている部分がある。
もともとの遺伝や資質、性格、そしてそこに環境が多大な影響を及ぼして暴力的な人間が出来上がる…と。
虐待を受け続けて脳に損傷を受けている可能性もあるらしい。
決して一つの要因だけで連続殺人鬼が生まれるわけではないんだよね。

大和は人格破綻者ではある。
捕まった後、彼は反省するでもなく少し図に乗ってしまった…と、今度やるならもっとうまくやれるはず…と言った。
逮捕され死刑が確定していても淡々としている。
感情を失っているかのように。

雅也は調査をすすめるうちに、どんどん大和にのめり込んでいく。
周囲からの話は、大和に同情するもの、殺人鬼だと嫌悪するもの、でも大方の人間は同情的だったりする。
彼の犯罪に気が付いた女性などは、通報すらしなかった。
大和は人を魅了し、崇拝させ、意のままにする魅力がある。
連続殺人鬼にはそういう人間がいる。
じゃないと、何人もを殺すことなんてできないから。
人を信用させ、周囲にも気が付かれないように行動できる。
なんか、それもぞっとしたな。

雅也がどんどんのめり込んでいく様子も怖かった。
そして調査をすすめるうちにある事実が浮かび上がる…。

ラストはまぁ少し救われたような救われなかったような…。
いやこいつ(大和ね)すげぇな…と思わされた。
結局大和のような人間は誰も理解できないのだね。
当たり前だけど。
あまりグロくないので、映画を見るのに躊躇している方は原作の方をおすすめ。
描写されない部分が多いのでマシだと思うわ。
これあんまり映像で見たくないもん。
あと、主人公は容姿端麗で若く見える…とのことだけど、この点ではあまり阿部サダヲさんでは当てはまらない気がするんだけどな。
それでもきっと演技力でカバーしてるんだろう。
人好きする、そして人を信用させてしまうという点でははまり役な気がするし。

映画も観てみたい。わりにグロ平気なので。
あ、でも子供が虐待されるのかぁ…それは観たくないな。。

犯罪を犯す人をニュースで見るたびに、理解できない…と思っていたけど、そりゃ当たり前だなと思った。
そもそも他人を見るときにどうしても自分基準で見てしまう。
そう考えると、私ってやっぱ普通の(普通ってのも曖昧だけど)つまり大それた犯罪を犯すことなんてない人間なんだと安心もする。
ま、わからんけどね!!(こわっ)
とにかく人間の育つ環境を考えさせられる小説でした。。

残酷依存症 (幻冬舎文庫)

残酷依存症 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 櫛木理宇
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2022/04/07
  • メディア: Kindle版

殺人依存症 (幻冬舎文庫)

殺人依存症 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 櫛木理宇
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2020/10/07
  • メディア: Kindle版

氷の致死量

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  • 作者: 櫛木 理宇
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2022/05/10
  • メディア: Kindle版

虎を追う (光文社文庫)

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  • 作者: 櫛木理宇
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2022/06/14
  • メディア: 文庫

世界が赫(あか)に染まる日に (光文社文庫)

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  • 作者: 櫛木 理宇
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/11/22
  • メディア: Kindle版

 


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