本「じょかい」じょかいに目をつけられた男はもう終わり…ホラーです [本]
「じょかい」 著者 井上 宮
★★★☆☆ (個人評価 ★多めならおすすめ)
健次は仕事を辞め派遣社員をしている。
ところが仕事が減り日々の食事にも困るほどになっていた。
そんなとき、久しく会っていない兄から電話がある。
健次は出なかったのだが、その後実家の母からも電話が。
兄が最近実家に来ない、様子を見てきてほしい…と。
様子を見に行くと家には見知らぬ女と男の子がいた。
なんか、しょっぱなから暗い暗い気持ちになるお話でした。
派遣社員でなんとか食いつないでいる健次。
けれど仕事が減り貯金も底をつく。
どうやって暮らしていくのか…暗澹たる状況。
これがもう、胸に痛くこっちまで焦燥感と絶望感にかられてしまった。
表現がうまいのかな。
実家の母親がまた最悪で、幼い頃から優秀な兄ばかり可愛がる。
健次はもう何年も実家に帰っていないのにそのことには一切触れず、兄が最近実家に帰ってこないと健次に電話してくる始末。
知るか!と言って電話切ればいいものを、健次は兄の様子を見にいくことに。
ここからもう、この健次って男にいらつきっぱなし。
なんちゅうか、嫌なことからは逃げ出すタイプ。
嫌なことから目を反らし、そのうちなんとかならないか…と思う系。
この健次へのイラつきは、読んでる間中ずっと感じ続けることになる。
動けや!行くなよ!友達を巻き込むな!変な嘘つくなよ!
…こいつ…あほやな…と思う事しばしば。
この主人公の言動にイラつくということは、なかなか読み進むのもきついということで。
これ一気に読んだら二時間ほどで読み終われるのに、結局何日もかかってしまった。
私の嫌いなタイプの男なんだよなぁ。
いや、確かにね、自分の理解を超える状況を目にしたら人間なんてこうなるのかもしれん。
それだけリアルに描かれてるんかもしれん。
けどさ!
現実というか、そもそもこのお話自体が荒唐無稽なわけやん。
じょかい、という男を喰らう化け物の話やん。
それならもっと勇敢に立ち向かうヒーローがいてもいいやん。
そうやって、このじんわりと絡みつくような暗鬱なお話をすっきり爽快にしてもええやん。
まぁ健次にもちょっとはいい所もあるねん。
子供が一人、じょかいに囚われてるんだけど、その子を助けようとするとことかね。
このシーンもイラっとはするんだけど。
健次が母の命令で兄の家に行く。
兄は新婚で郊外に家を建てている。
兄の嫁は、健次の元カノ。
派遣社員である健次に見切りをつけ、健次の兄に乗り換えたのだ。
ここら辺はまぁリアルっちゃーリアルかもしれん。
派遣でもいいのよ、そんなの本人次第やん。
けど健次の場合は、派遣であることを恥じているしそのことを言い出せなかった。
そんな彼氏いややん。
派遣なら派遣で頑張ればいいし、仕事を恥じることはないやん。
正社員の面接を受けまくっているけど落ちまくる健次。
自分はどうしようもない男だと自己嫌悪に苛まれている。
だから元カノが兄と結婚したことも、仕方がない事だとも感じている。
もうね、ここら辺もイライラしたわ。
いや、兄に怒れよ!元カノも詰ればいいやん。
どうせ…俺なんて…という考えに支配されてる健次(主人公)。
まぁ成長過程で、実の母親から常に虐げられてるからそうなるのもわからんでもないんだけどさ。
それならそれで母親を切ればいいものを、なんか未だに母親のいうことは絶対!という感じがまた。
母親からの要請で兄の家に行く健次。
ところが兄の家にはなぜか幼い男の子がいた。
子供はまだいないはずなのに。
兄は別人のように、見る影もなく太っている。
そして家の中には見知らぬ不気味な女がいた。
変わり果てた兄は意思を持っていないかのように目の焦点が合っていない状態。
得体のしれない女の作った流動物を意地汚く啜り貪り食っている。
ただならぬことが起こっているのだが、健次にはどうすることもできない。
この女は大きなマスクをしている。
今ならマスクしてても別に変じゃない。
でもコロナ禍前に花粉の季節、冬以外にはそないマスクしてる人はいなかった。
なので、このマスクにまず違和感を感じる主人公。
まぁこのマスクというのも重要なアイテムなんだけどね。
ラストはこのじょかいという女との死闘が繰り広げられる。
ここもね、ほんっとにイライラ。
きっと読みながら眉間にしわ寄せて鬼のような形相で読んでたんちゃうやろか。
足が動かない…というシーンがどれだけ多いか!
いや、動けや!逃げろや!
ここにも、あまり生きる意志がないのかと思わされるけど、人間の本能としてさ、死にたくないって必死になるもんちゃうの。
それがじょかいの能力だとしても、なんか健次は逃げることが下手すぎるわ。
元カノを助けようとするのはわかるけど、手首を結んじゃったら逃げにくいやろが!
あほか!と思うこと多し。。。。
健次の思考があまりにも人間臭くてイラつくんだろうな。
頭のどっかで兄がいなくなれば再び元カノとよりを戻し幸せな頃に戻れる…と思ってたり。
兄の家から逃げ出したあとも、行かなくて済む理由をなんとかひねり出そうとしたり。
子供を助けようとすることで自分の罪悪感を減らそうとしたり。
わかるんよ、わかるねん、その考え方も。
けど、こういうのはあまり目の前に赤裸々に見せられたくないねん。
主人公はもっと純粋な正義感や、優しさを持っててほしいやんか。
このお話読んでると、夢の中でなかなか走れないあのもどかしい感覚を感じる。
泥の中を進んでいるような、足がうまく動かないような、水の中で動いているような、そんな身動き取れない感覚。
ねっとりと纏わりつく空気感。
息苦しさを感じるほどの閉塞感。
健次が動けなくなっていると、はよ逃げろや!とイラつくけど、実際こんなものかもな…という冷めた部分もあって。
読んでる間、自分が悪夢の中にいるようなそんな時間を過ごさせてもらったわ。
当然ラストもすっきり…とはいいがたい。
ていうか、全然解決しとらんし!
あんまりスプラッタじゃないので、ホラー苦手な方も読めるかな。
恐怖を感じる…というよりかは、怪物ものという気がしたな。
あんまり怖いとかは思わなかった。
ただ、生理的にぞわぞわするような、顔に蜘蛛の巣が纏わりついてて手で払いたくなるような、そういうホラー。
読んだあと、トイレに行くのも怖い!という系統ではないので安心して読んでください。
わからんけど。
今のコロナ禍でのマスクをうまく使ってるし、じょかいを、昔流行った都市伝説の原因とするとこなんかはすごく面白かった。
私は女性なので大丈夫ですが、独身でさみしい気持ちを抱えている男性は気を付けてくださいね。
マスクをした女性があなたを狙っているかも…。
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