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本「英雄の書 下」兄を探すため物語の地へと向かうユーリに試練が! [本]

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「英雄の書 下」 著者 宮部 みゆき

★★★☆☆ (個人評価 ★多めならおすすめ)

同級生を殺傷し行方不明になった兄を探し、オルキャスト(印を戴く者)として物語の地、ヘイトランドへ向かったユーリ。
そこは英雄が記されているエルムの書、発祥の地だった。
英雄を追う”狼”アッシュと共に、従者のソラ、赤い本のアジュと英雄を追うユーリ。
しかし過酷な運命がユーリを待ち受けていた…。

英雄の書(下) (新潮文庫)

英雄の書(下) (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/06/27
  • メディア: 文庫

ようやく後半になって、普通のファンタジーっぽくなってきたかな。
物語の世界へ入ったからかも。
でもやっぱりなんていうか、輪(サークル)だったり、紡ぐ者だったり、理解の範疇を越えてる部分がたくさんある。
それでも上巻よりかは、冒険っぽくて読む速度は上がったな。
まぁイケメン神父が登場したってのもあるのか(あるのか?)
本の背表紙に、驚愕の真実が明かされる!みたいな事が書いてあって、ああ、なんとなくわかってもた…と。
最初からそうじゃないかと思ってたことが、その通りで、期待通りで嬉しいような哀しいような複雑な気持ち。

しかしお兄ちゃんが可哀相すぎるな。
元はいじめられていたクラスメートをかばったことで、先生から嫌われてしまい、その先生の傀儡ともいえる同級生に自分がいじめられるようになったと。
それでもナイフで刺したらあかんやろ…。
まぁそれは英雄に憑りつかれたから…という理由付けはされてるけどね。
怒りを内に抱えていたため、英雄の影の存在に眼をつけられてしまったらしい。
確かに、怒りとか憎しみとか嫉妬とかを抱えてしまって、それが大きくなりすぎたら、思いがけない行動に出ることもあるかもしれんね。
まぁ、そこはいいとして(いいんかい!)。

兄が事件を起こしてからずっと行方不明…となると、両親はきついねぇ。
理由もわからないまま、生死もわからない、罪を償わせることもできない、これはきつい。
だからこそ、ユーリは兄を連れ戻すために別世界へと行かなければならなかったんだけどさ。

ラストは納得いくようないかないような。
英雄を封印しないんかよ!という中途半端感があったわ。
ユーリの使命…というものが明らかになると、ええええ~めっちゃ身内ごとやん。
まぁいいけどさ(いいんかい)。
どうやら続編があるらしく、ラストもそんな感じで終わる。
だから余計に中途半端感が感じられたんやね。

冒険とかファンタジーにつきものの怪物も出てはくるけど、いまいち姿かたちが想像できない感じ。
それにターゲットがやっぱりよくわからない。
児童書にしては難しすぎるし、内容も結構グロかったりするし。
まぁ変わった結末やなぁとは思った。
ハッピーエンドでは決してないし、バッドエンドとも違う。
ただところどころうなずけるセリフがあったりもした。
独りの子供が己の意に染まぬものを殺す世界は、万の軍勢が万の民衆を殺す世界と同じこと、とかね。
一が万、万が一、ということ。
それでも、良い事をしようとした兄が結果的に殺人者となり、咎を受けるというのも可哀相な気がしてならないわ。
だからと言って人を殺していいわけないんだけど、それでも苛めがある現実が悪いんだと思えてならないもんな。

ファンタジーの形を取ってはいるけど、現実社会の問題、苛めを取り扱ってるのは戦争ほど多くの命を奪うわけではないけれど、一人の人間の生死を左右するという意味では戦争と同じ悪なのだと言いたかったのかな。
第三者から見たら苛めは悪いことで醜い事で終わるかもしれん…でも当事者からしたら生死の問題になったり、それこそ相手を殺すしかない…とこまで追いつめられる場合もあるだろうね。
今のように、先生が見て見ぬふりをする学校の現状では苛めは絶対なくならないだろうね。
苛めがあったとしても学校側は知らなかった、気が付かなかったで終わらせるだろう。
これからもっともっと学校側はシビアな対応しかしなくなる気がする。
学校は勉学を教える場、人間形成は保護者側でやってください、みたいな。

結局自分の身は自分で守るしかないのかもしれない。
精神的に強く育てなければならないんだろうな。
苛められた時に、死を選ばず、復讐も選ばず…。
難しいね、逃げるしかないってこと?
苛め問題は兄の事件のきっかけとして描かれるだけで、詳しく書かれているわけではない。
だけど、根本にはそれがあって、色々考えさせられたな。

英雄の書3.png

ファンタジーとしてはクトルゥー神話を元にしているとあとがきにあった。
善と悪の戦いやね。
物語を紡ぐというキーワードでここまで世界を広げられるんだから、やはり作家さんはものすごいな。
でもちょっと世界観が複雑すぎて理解しがたい部分があったので★は3つ。
上巻よりは下巻の方がスピード感が増して面白かった。

 

 



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