本「兇人邸の殺人」廃墟テーマパークの中に建つ屋敷の中には… [本]
「兇人邸の殺人」著者 今村昌弘
★★★★☆(個人評価 ★多めならおすすめ)
班目機関の資料を探しているという会社社長とその秘書に呼び出された比留子と葉村。
彼らとともに廃墟テーマパークと呼ばれる、廃れた姿を売りにする遊園地内にある邸宅に忍び込むことになる。
その屋敷には以前班目機関の研究者であった人物が住んでいるという。
護衛の傭兵たちと社長、そして比留子と葉村は深夜その屋敷に忍びこんだ。
ところがその屋敷には奇怪な化け物が徘徊していて…。
これで今村さんの小説は三冊目なんだけど、順位をつけるとしたら
一位が一作目「屍人荘の殺人」二位がこの「兇人邸の殺人」だな。
二作目も面白かったけどやっぱり予言者だとオカルト色が薄く感じてしまったわ。
今回、一作目に引けを取らないくらいの出来事が比留子たちを襲う。
首を切る化け物が徘徊する屋敷。
ところがね、その屋敷は例えばうっそうと茂った山の中にある一軒家…とかではなく。
なんと、遊園地の中に建つ、以前はお化け屋敷として使われていた家なわけよ。
当然、朝になれば遊園地は開園し、にぎやかな音楽が聞こえてくる。
これだけでもなんか異質な感じ。
その屋敷に住むのは遊園地のオーナーでもあり、班目機関の元研究者でもある不木とその使用人たち。
そこでは遊園地で働く従業員を呼び出すのだが、一度入ったものは二度と出てこないという。
一体何が行われているのか。
比留子たちは、班目機関の研究に興味を持つ社長成島に誘われ、一緒にその屋敷に潜入することになる。
成島は比留子の事件を吸い寄せる体質を利用したいという。
比留子がいれば何かしら起こる、何かしら起こるということはきっとそこには重大な研究結果があるはずだという理論で。
比留子にしても班目機関のせいで二度も危ない目にあっていたため、色々探っている最中であった。
両者の利益が合致し、一緒に行くことになった。もちろん葉村も一緒に。
夜中に忍び込むのだけれど、その屋敷には首を一撃で切り取る化け物が徘徊していた…というお話。
一体どういう理由でその化け物が生まれたのかという謎、そして一緒に忍びこんだ仲間の中に以前班目機関での研究対象であった人物が紛れ込んでいるという、一体誰が?という謎に振り回される。
化け物だけではなく、仲間内で殺人が起こる。
一体誰が犯人なのか。犯人の目的は?
屋敷から出るには鍵が必要なのだが、その鍵を持った人物は化け物に殺されてしまい鍵を手にすることができない。
またもやクローズドサークルに。
読んでる間、わくわくどきどきできた。
まぁ人は殺されていくんだけど、犯人がわからない。
全員怪しいのだけど、おそらく犯人ぽい人は違うんだろうなぁと思いながら読み進めた。
脱出する手段もなく、銃でも殺せないほどの化け物をどうするのか、等々読み飽きなかったな。
比留子の推理もさすがだし。
でも葉村にははらはらさせられたな…。
葉村は自分が比留子のお荷物になっているのではないかと苦悶し、役に立ってないばかりか、重荷になっているのではないかと悩む。
まぁ自分だけを守っていればよかった比留子が葉村をワトソンとしてそばに置くことで、彼をも守る必要が出てきてしまったからね。
そのせいで、正義に反することもせざるを得なくなる可能性も出てくる。
葉村の苦悩はなかなか解決しないよね。
そばにいて比留子を守りたいけど、現実は守られている。
かと言って離れてしまえば危険に襲われる比留子をほおっておくことになる。
それでもそばにいることを選択するしかないのだけど。
このお話が好きだな~と思ったのは、ラスト近くに判明する犯人と化け物の因縁。
詳しくは読んでもらうとして、もの悲しい結末になっている。
ありえない展開でクローズドサークルを作り出し、ありえない存在を登場させるんだけどそこまで荒唐無稽でもない。
今村昌弘さん好きだなぁ。。こういう小説好き。
一つ問題があったのは、なかなか屋敷の構造が頭に中に浮かばないこと。
こう曲がったらこう階段があって、ここを通ればここに行けて…というのはもうややこしい。
方向音痴である私には理解不能。
まぁその部分をなんとなくで読み進めてもなんとかなります。
本の最初に屋敷の見取り図が載っているので、それで理解できる人はできるはず。私は無理でした。
とにかく面白い小説でしたわ。
これはミステリー好きの人もホラー好きな人も楽しめると思います。
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