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映画「桐島、部活やめるってよ」人気高校生が部活を辞める!色々な人間関係に波紋が広がりはじめ…。 [映画]

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「桐島、部活やめるってよ」
2012年日本映画103分

★★★★☆(個人評価 ★多めならおすすめ)

監督 吉田大八
出演者 神木隆之介  橋本愛  東出昌大  大後寿々花

高校バレー部のエース、桐島が突然部活を辞めるという噂が広がる。
親友の宏樹(野球部だけど休部中)は、初めて聞く話に驚く。
野球部だけどさぼって、帰宅部である友達と倉庫裏でバスケに興じる日々。
桐島の彼女も青天の霹靂に驚きを隠せない。
桐島退部により、高校の部活員たちに徐々に波紋が広がり始める。
虐げられているオタクが集まる映画部、桐島の彼女とつるんでいるバドミントン部のかすみ、桐島がいなくなったバレー部、宏樹に憧れている吹奏楽部の女の子、等々がそれぞれ心の中に抱えたものが溢れ初めていた。。


まず、主役級に名前がタイトルになってる桐島。
この男子高校生はバレーボール部で、どうやら大活躍するエースだったらしい。
その桐島が部活を辞めるということで、今まで補欠だったものがレギュラーになってしまう。
今までは強かったバレー部が、桐島がいないことで試合に負けてしまい、部内が剣呑な雰囲気に。

桐島と親友の宏樹。
背が高くイケメンで女子に人気がある。
野球部だったが、ほぼ休部状態。
桐島の部活が終わるのを他の友人たちと倉庫裏でバスケをしながらだらだら待つ日々。
ところが突然桐島が部活をやめるという噂を聞きつける。
親友だと思っていたのに、その話をまったく知らなかった宏樹はショックを受ける。

桐島の彼女であるリサ。
美人でスタイルもよく、クラスの女王的存在。
彼女もまた桐島が部活をやめることを知らなかった。
あわててメールするも、電話もなにもかも通じない。
ショックのリサは今までの愛想の良い顔もできず、友達とも険悪な雰囲気になる。

このリサの友達サナもまた可愛くて、イケメン宏樹と付き合っている。
ところが同じクラスで吹奏楽部の亜矢は宏樹に憧れ、いつもその姿を目で追っていた。
そのことに気が付いたサナは、亜矢の目の前で宏樹とキスをする。

リサと、サナとつるんでいるバドミントン部のかすみとミカ。
彼女たちは部活を頑張っていて、帰宅部のリサやサナとはちょっと違うタイプでもある。
一緒にいるけど、どこか距離を感じているのだが、桐島と連絡が取れなくていらつくリサとまずい雰囲気に。

そしてクラスでも目立たない地味な男子高校生の前田(神木隆之介)

彼は大の映画好きで映画部に所属。
自分が書いた脚本を顧問に却下されて、それでも撮影続行しようとしている。
しかし撮影しようとする屋上に、吹奏楽部の亜矢がいて困り果てる。
亜矢は、宏樹が遊んでいる姿を見ようといつも屋上で練習していたのだ。

とこんな感じで、登場人物のそれぞれを短いスパンで描いていく。
肝心の部活を辞める桐島はまったく出てこない。
ここまでみんなをかき回している本人は名前だけで、映画には出てこないのが斬新。

桐島が部活を辞める…その出来事が今まで隠していて目立たなかった彼らの格差を赤裸々に見せつけることとなる。
例えば帰宅部は自分を飾り気楽に見えるが、おそらく打ち込めるものを持っている部活員たちに少し気おくれを感じている。
宏樹は野球を辞めて帰宅部になってはいるが元々運動神経が良く、スポーツ得意なため自分を持て余している状態。
バレーボール部は桐島に頼っていたことにみなが気づき、いら立ちを隠せなくなっている。
部内で桐島が浮いていた…という噂もあり、人間関係で辞めたのではと不安にもなっている。
桐島の彼女リサは自分が美人であることに自信があり、桐島の彼女であることにも自尊心がある。
なのに部活を辞めることを知らなかったり、その後桐島と連絡が取れないことで、不安にいらだつ。
人気者の彼氏がいて、華やかだった自分のアイデンティティーが壊れていくようで耐えられないのだろうな。
リサの友達であるサナもまた、宏樹と付き合うことで自尊心を保っている感じ。
リサにおもねるような感じではあるけど、サナは他の子たちをすべてバカにしている感じ。

 

桐島2.jpg
映画.comサイトより画像引用

 

なんていうか高校生って色々考えて、自分の立ち位置とか、存在できる場所とか、学校内に確保しないと生きていけないんだった…と改めて思い出せる映画。
自分を殺して、相手に合わせて、部活に打ち込むふりをしたり、本当にスポーツにのめり込んだり。
スポーツに一生懸命になることをかっこ悪いと思ったり。
外見に気をつかうグループと、地味なグループでくっきり分かれたり。
地味なグループは地味なグループでつるんでしっかり自分の居場所を確保する。

ああ、これからこの過酷な世界に娘が飛び込むんだな…と思うとちょっとぞっとしたわ。
でもあの年頃の子たちは、みんな自然にそうやって居場所を作っているんだから何とかなるんだろうけど。

クラスの中でも部活の中でも友達の中でも、そして部活同士でも、れっきとしたヒエラルキーが存在するという怖さ。
しかもそれはめったなことでは崩れない。
でも頂点にいるものは転落することもある。
頂点にいた桐島が部活を辞めるということで、自ら頂点の座を捨てたことになる。
周囲がざわつくのは当たり前かもしれない。
それによって、波紋が周囲の雰囲気を壊していくのだ。

青春物語という形をとっているけど、これは社会の縮図でもあり、学校という狭い範囲の中での格差を如実に表し、自らのアイデンティティーをどこに見つけるかという深いテーマを含んだ映画だと思ったわ。
映画部は格差の下に位置し、部室も剣道部の部室の一角を間借りしている状態。
中は狭くオタクたちの温床になっている。
それでも自分たちが撮りたいと思った映画を作ることで、そこに自分たちの存在意義や価値を見出していく。

ラスト近く屋上でひと悶着あるのだけど、そこでは今までピラミッドの頂点にいたものと中間に位置するもの、そして一番下にいたものたちがごっちゃまぜになって一緒の土俵で大揉めする。
でもそれが終わるとまた格差は現れ日常は続いていく。
また自分の居場所を探して日々を過ごしていくのだ。
それでも何かが変わったと言える子たちもいて、その子たちはこれからどうするのだろう…と期待を持たせる終わり方になってる。

 

桐島.jpg
映画.comサイトより画像引用

 

高校時代って子どもでもなく大人でもなく、中途半端な時代で、狭い狭い世界の中で必死にもがいて生きている時だと思うわ。
まだまだ親に頼って生きていて、それでも仲間の中では必死に自分の存在をアピールしなければならない。
スポーツに打ち込むなんてくだらないと厭世的に見せたり、試合に勝ちたいと一生懸命に練習することで自分は他とは違うと安心したり。
仲間の中で自分を偽ってない子はいない時期じゃないかな。
なんとなく違うと思っていても、実際に行動にはうつさない。
人を好きになることすら、自分を良く見せる、そして自分の位置を確保するためだったりする。
恋愛の練習をしているような感じ。
結婚というものがまったく見えていないから、好きという感情に安定は求めていない。
気楽な恋愛ができる時期なんだけど、本人たちは本気で好きだと思ってるし、恋愛感情に振り回されるほどの幼さもあって、これを上手く表現してるなぁと思った。

観ててなんか胸が痛くなるし、こういう高校生いっぱいいるんだろうなと思えるリアルさがあった。
彼女たち、彼らは必死に生きてる。
でもそれは狭い範囲でのことなんだよ、社会に出ればもっと視野を広げられるよ、とその時に大人が話しても理解できないだろう。
彼らにとってはその狭い範囲こそが世界のすべてだからね。
そこで恋愛し、必死になり、自分を繕い、友情を探し、打ち込めるものを探す。
そういう痛々しい時代を切り取ってみせたこの映画は、現役高校生が観たらどう思うんだろうか。

大人が観ても面白かったし、こういう時代に戻りたいかっちゅーとあまり戻りたくないかも…と思わせてもくれる映画でしたな。

ルナ129.jpg

 

高校生って大変だにゃぁ
↑まぁ、大人は大人で大変だけどもね

【本映画過去記事】
本「水冥き愁いの街―死都ヴェネツィア」龍の黙示録シリーズ。ヴァチカンへと帰る修道士、そして龍に魔の手が。
映画「おくりびと」納棺師という仕事を選んだ男の人生とは…。本木雅弘主演。
映画「ファイナル・カウントダウン」最新兵器を積んだ原子力空母が1941年真珠湾にタイムスリップ!

原作はこれ↓読んでみたくなったわ


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ojioji

力作のレビューに、また見た気分になっちゃいました(^^;)
この齢になると、別世界のお話にしておきますが、今の子たちのこのオープンな?振る舞いに、かつては羨ましさを感じたときもあったけど、やっぱり隠れてこそこそのほうが性に合っているなあと思うようになりました(=^ω^=)
by ojioji (2016-02-23 12:46) 

youyou_s

>ojiojiさん 子どもってやっぱり時代によって違ってくるなぁと思いますよね。今の子たちはあまり先生に対し敬意を払ってないような気がします。その理由としては親が先生を尊敬してないから…なような。
今の子がオープンになっているのも、やはり親の影響があるのかな…と。
昔だと性的なことは家庭内でタブーだったけど、今は親が結構オープンなのかも。
by youyou_s (2016-02-23 22:58) 

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