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本「サバイバー」壊滅し廃墟と化した東京で生きる人々…果たしてどんなドラマが生まれるのか [本]

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「サバイバー」
著者 木下半太

★★★☆☆(個人評価 ★多めならおすすめ)

4月1日、エイプリルフールにそれは起こった。
突然世界は壊れ始める。
地は割れ、マンションは崩れ、すべてのものが崩壊する。
かろうじて生き残った人々は残された食料や水で生きていく。
これは神様がリセットボタンを押したのだろうか…。

私の大好きなサバイバルもの…と思ったけど、ちょっと違うなぁ。
確かに、生き残るために生きていく生存者たちのお話なんだけど。
ストーリーは4人の主人公たちで章が分かれている。
1は斉藤貴夫編。
世界が崩壊する前は36歳の不動産屋さんだった。
彼は今の毎日を記録している。
誰が読むともわからずに。
そしてアルマーニのスーツを着ている若者と出逢う。
彼は婚約者を探しているという。
一緒に探し始めるのだが…。
これに関してはラストになかなかの驚きが待っている。
そうなのか…と。
木下半太らしい感じ。
この方の著作は2冊ほど読んだのだけれど、どれも少しラストがちょっとひねってある。
まぁ日本が崩壊しているので、生存者たちは最初は食料を奪い合ったりして殺し合うのだけれど、それも徐々に治まっていく。
東京にはコンビニ等がたくさんあり、元々少ない生存者たちで奪い合わなくてもそこそこ行きわたるのだ。
それでも食料を独り占めしようとする輩はいるのだけれど。
面白いのは、ただ生きるだけ…というのが「することがない」となること。
食料や水はしょぼしょぼだけれど手に入る。
でもほかにやることがない。
なので斉藤は記録を付け始め、アルマーニスーツの男の手助けをすることにする。
この章で、おおまかに日本がどうなったのか…がわかるようにはなっている。
まぁ納得いかない部分もあるのだけどね。
私が期待していたどうやって生き延びるのか…ではなく、何をして生きていくのか…みたいな感じ。
誰も復興しようとしたりはしてなくて、ただ生きてる感じ。
うーん。そんなものなのかなぁ。
この章に関してはラストどうなるのか…みたいな終わり方にはなってる。
2の章は田中町子編。
実はこれはアルマーニスーツが探している婚約者である。
彼女は生きていたのだ。
そして4人の男と知り合い彼らと一緒に楽しく生きようではないか、と東京中に落書きをしてまわっている。
落書きと言っても、お気に入りの言葉を書いていくだけ。
町子の言葉は「奇跡はくしゃみみたいなもの」奇跡は誰にでも起こるという意味らしい。
けれど平穏だった5人の生活にも暗雲が立ち込めていく。
町子がレイプされてしまったことで、それを助けられなかった4人の男は…。
この章では女性が生き延びることの大変さがわかる。
4人の男に囲まれていたからこそ、町子は楽しく生きられたのだ。
彼らの庇護がなくなればどうなるか。
守ってくれる男を探し、大体は複数の男に身体と引き換えに守ってもらうことになる。
…そうかもしれんな。
もう警察も法律もない場所で、犯罪など当たり前になるだろう。
この章が一番怖くてイヤだったかも。
こんな世界にもし娘と二人放り出されてしまったら…。
おそらく私は娘を守れないだろう…。こわすぎる。

震災の時、実際にレイプがあったと聞いている。
異常事態が発生すればモラルなんて吹き飛んでしまうのだ。
ただ、町子と一緒に居た4人の男たちの考えはよく理解できない。
これは男性作家だからこその考えかもしれない。

3は11歳の子供が主役。
彼は同じ子供同士でチームを組み、大人を狙って殺している。
そして食料や持ち物を奪うのだ。
導入からは救いがないのだが、ラストは救われた感じ。
これはちょっとほっとして読み終われた章。

ラストの4章はアルマーニスーツの男の物語。
壊れた世界で恋人のマチコを探している。
マチコが描いたであろう「奇跡はくしゃみのようなもの」を見つけ、狂喜する。
彼はずっとマチコのひもであり、仕事もせずニートだった。
世界が崩壊したことで神様がリセットしてくれたと感じている。
彼は自分の居場所はどこにもないと感じて生きてきた。
何がしたいわけでもなく、無気力で怠惰な毎日。
自分を養ってくれている恋人に対しても優しいとは言えない態度。
彼の章では、壊れた世界での話ではなく、その前のお話。
自殺しようとしている親友を助けようと奔走するのだが…。

本の帯で、作者が年間三万人もの自殺者が出ている状況を少しでもなんとかできないかと思って書いた小説らしい。
最後のニートの話なんて、まぁ生きる気力なくしている人たちは共感できるのかもしれないし。
でも結局、今の生活が嫌で嫌で我慢できないと思っている人たちは世界が壊れてしまえばいいと一度は思ったことがあるはず。
それをかなえている小説ではあるけど、世界が壊れたからって別に変りはしない…という気も。
確かにローンも借金も仕事も会社も嫌な上司も全部いなくなるから楽にはなるかもしれない。
でもそれだけ。
結局生きていかねばならない、どんな世界であっても。

まぁ自殺しようとしてる人がこの小説を読んで、生きようと思えるのかどうかはわからないけど、”生きる”ということは、どんな世界でもどんな状態でも大変なことであると思う。
どんな世界であっても楽しみを見つけることができる人はいるし、そうやって生きていかなければ、自分から幸せだと思わなければ、どこに居てもどんな環境にあっても不幸なのだろう。

面白かったけど、少ない生存者の中でも殺し合ったり、レイプしたり、独り占めしたり…人間というのは縛りがなければこれほどまで怖く恐ろしい生き物なんだと考えると嫌にもなる小説でしたわ。
世界が壊れてしまえばいいと思うこともあるけど、やっぱり今の世界がイイ…と思います。

ルナ123.jpg

わたちも今のままがいいにゃ。

【本映画過去記事】
漫画「デトロイト・メタル・シティ」デスメタルのキング、クラウザーの正体…それはPOPSをこよなく愛する地味な根岸だった
映画「フリー・ウィリー」孤独な少年と家族から引き離されたシャチの友情の行方は
本「高級ホテルのとんでもない人々」高級ホテルに宿泊する人々にはとんでもない人たちも…

\絶対防災グッズは必要!/ 












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コメント 2

mitsuya

極限状態に置かれた時どこまで人間らしく男らしく生きれるか……ワタクシはそれを仮面ライダーに教わった気がします(^^) こういった世紀末物って人間の本性が見えるようで下手なホラーよりぞっとしますよね。Youさんの書き方ですごく結末が気になりました……ブックオフ行ってきます(^^)
by mitsuya (2015-05-26 22:43) 

youyou_s

>mitsuyaさん そうなんですよね、極限状態に置かれた人間の態度とか行動で本質がわかりますよね。そういうのに興味があってサバイバルもの大好きなんですよ~。
結局超自然現象(幽霊とか怨霊とか)より、人間の方がよっぽど怖いってことですよね。
by youyou_s (2015-05-27 08:14) 

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