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映画「風立ちぬ」宮崎駿が最後に魅せる夢を見ることと夢をかなえること [映画]

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「風立ちぬ」
2013年日本映画アニメ

★★★☆☆(個人評価 ★多めならおすすめ)

監督 宮崎駿
声優 庵野秀明 瀧本美織 

大正から昭和にかけての日本。
戦争、大震災により日本は不況の中にあった。
堀越二郎は幼い頃から飛行機に憧れを抱き、その美しいフォルムに魅せられ自分も美しい飛行機を作りたいと願っていた。
成長した二郎は大学で航空学を学び、三菱に入社、憧れの飛行機を設計する仕事につく。
震災時に助けた少女と再び出会い、二郎は恋をする。
しかし美しく成長したその少女は結核を患っていた。

ゼロ戦の設計者、堀越二郎と、作家の堀辰雄をモデルにした長編アニメーション。
映画を観終わって感じる違和感。
この違和感の正体はなんだろうともどかしくなった。
まず、二郎は幼い頃から飛行機に憧れる。
ドイツの設計者カプローニを尊敬し、彼は時折二郎の夢の中に現れる。
彼は二郎が言って欲しいことをそのまま口にする。
二人とも戦争の道具として使われる飛行機としては設計していない。
空を自由自在に飛び回る美しい物…として飛行機を見ている。
風立ちぬ.jpg
映画.comサイトより画像引用
ゼロ戦といえば戦争なのだが、この映画では戦争をあまり詳しく描かない。
飛行機を中心に描き、戦争シーンと言えば飛行機が撃墜される様子くらいか。
本来なら、自分が作りたいものとは違っていく、戦争のための道具…というところに葛藤があるんじゃないのかと思えるが、そこも描かれない。
あっさり。
日本は不況にあえぎ、子供たちは飢えている。
ところが自分たちの造る飛行機に費やされる金額は途方もない。
しかし彼らはそれをそのまま受け入れている…ように見える。
違和感を感じるのはそういうところにもあるように思える。
通常だったら感じるはずの葛藤や不満、疑問、そういうものが一切排除されているからかも。
ただただ「美しい飛行機」それが戦争に使われようが使われまいが綺麗な飛行機を作ることに終始する二郎。
彼が人間的に思えないのが感情移入もできない理由だし、共感も同情も彼の感じる思いも少しも感じられない。
恋人の菜穂子が喀血したとき、急いで彼女の元にかけつける二郎。
その道中で涙を流すのだが、その一瞬だけ彼の感情が感じられるくらいか。
なんだか日本の置かれた状況からも、菜穂子の結核からも、戦争からも、二郎は遠く隔たっているような気がしてならない。
他人事のような。
菜穂子を愛してはいるのだろう。
でも飛行機と比べたらどうなのか。
同等程度なのではないか、と思えるのだ。
二郎はきっと田舎の地主かなんかのお坊ちゃまだ。
お金持ち。
だからこそ、あの時代であっても東京で大学で学べている。
躾もきちんとされている、みるからに良いところのお坊ちゃま。
大学を出てすぐ、鳴り物入りで三菱に入社。
すぐ飛行機の設計に携わり、ルーキー扱いされドイツへも研修に行ける。
彼の人生は順風満帆で貧しさとも醜さとも一切交わることがない。
苦労しらずのお坊ちゃま。
その彼が恋をするが、それはあくまできっと菜穂子という美しい女性を愛でているだけのような気がしてならない。
彼女の本質を知って愛するようになったわけではない。
風立ちぬ2.jpg
映画.comサイトより画像引用
彼は飛行機の設計、飛行機という美しい物をその手で造りだすことには一生懸命だが、菜穂子を命をかけて愛しているのかと言えば首をかしげざるを得ない。
妹が訪ねてきて、菜穂子が可哀相だと泣く。
仕事で毎日遅くなる二郎、それを布団の中で治療もせず寝たきりで待ち続ける菜穂子。
それでも二郎は二人の時間を大事にしていると言う。
いやいやいやいや、それならもっと菜穂子と一緒に居ようとするだろう。
あくまで二郎は仕事優先で、それでも美しい菜穂子がそばにいて欲しい、という自己中としか思えない考えでいる。
愛する人が死に瀕しているなら、無理やりにでも病院に入れ、少しでも長く生きてもらえるよう考えるのが普通じゃなかろうか。
仕事ばっかりして日中一緒にいられず看病もできない自分のそばに置く、これほどの自己中があるだろうか。 
たぶん菜穂子はわかっていたのだと思う。
彼の好きなのは、美しい自分であって、病で衰えていく自分を愛してはくれないだろうと。
だから彼女は黙って山の治療所へ帰っていく。
死んでいく醜い自分を見せて嫌われたくないから。
二郎という人間に魅力を感じないからずっと違和感だったのかもしれないな。
今まで宮崎駿さんの描く主人公は感情に溢れ、大泣きし、必死で生きているのが感動を生んでいたんだと思う。
今回、大泣きして感情をあらわにするのは、二郎の妹のみ。
あとの人物は感情を表に見せない人ばかり。

世間知らずのお坊ちゃまが美しい飛行機を作る、そういうお話。
深い人間性に溢れた主人公ではないかわりに、風景は心揺さぶるほど郷愁に溢れている。
避暑地も復興にわく東京も、汽車もお店も、すべてが美しい。
二郎の眼にはあまり映っていないのだろうと思えるけども。

なんか観終わって不思議な気持ちになる映画。
菜穂子はきっと二郎を好きになりああいう形で別れることになっても後悔はしていないんだろう。
美しい自分を好きだと言ってもらえて、美しい想い出の中で生きていけるんだから。
ただそれを見せられたこっちは、なんか可哀相だな…としか思えなかった。
二郎は本質的に冷たい人間なんだろうな。

引退するときにあえてこういう映画を作った宮崎駿さんは、主人公に自分自身を投影させたんだと思えた。
俺は本来、自分本位のこういう人間なんだと、人間味あふれる映画を数々撮ってきたけど、本質は美しいものが好きでそういう映画を撮りたかっただけなんだと。
飛行機と映画と作るものは違ってもそれに対する想いは同じ。
宮崎駿だけは主人公二郎に共感し彼の思いを理解できるんだろう。
勝手な想像だけど、きっと宮崎さんも映画作成中は仕事一筋で家庭を顧みない人だったんじゃないか。
いや、間違ってたらすみません。

日本の古い風景に心揺さぶられたけど、全体的に感情移入はできず、悪意ない自分本位な人っているよなぁと再確認した映画でした。

ルナ110.jpg

案外ぼろかすに言ってるにゃ…

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コメント 2

mitsuya

宮崎作品は好きなものが多かったんですけどコレは悲しすぎました(¯―¯٥) 待つことしかできなかった当時の女性が切なすぎます。ワタクシなんかどちらかと言うと仕事を省みないタイプなんですけど、オトコもオンナもほどほどがいいですね(^_^)
by mitsuya (2015-04-23 04:46) 

youyou_s

>mitsuyaさん 昔だったらこういう仕事一筋の男性を好きな人は多かったのかも。今だったら、仕事と家庭とどっちが大事なの!!!と怒られますからね。ほんと、どちらにしてもほどほどがいいですよねぇ。
by youyou_s (2015-04-23 07:56) 

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